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● 黒崎勲 『新しいタイプの公立学校 』 日日教育文庫 2004-05-16
昨年夏、日本教育学会大会の課題研究報告の席上、本書のエッセンスを聴いて、フロアにいた私は戸惑いを覚えた。質問しようとしたが、会の進行を遮るには気が弱すぎたし、それに間もなく出版されるとのことだったので、手を引っ込めた。

本書の前半で展開されるコミュニティ・スクールとチャーター・スクールにかかわる政策立案ならびに立法過程をめぐるストーリーは興味深いものであるが、個人的にはやはり東京都品川区の学校選択制を考察した「教育委員会の主導性による改革」と題された第4章に関心が向く。もっと絞り込めばその第4節。同節のタイトルは「選択と学校改革のメカニズム」となっているが、目次には「抑制と均衡の原理による選択制度の一類型」とある。たぶん、後者が最終案だろう。

で、先の戸惑いは解消したかというと微妙である。
イーストハーレムを「典型」、品川をその「過激」な「一類型」として、「抑制と均衡の原理」のなかに収めようとしているのだということはよくわかる。本書のような評価も可能であるとも思う。しかし、そのことは「抑制と均衡の原理」の守備範囲の広さを例証するというよりは、むしろ、同原理の完備性を著しく損なうのではあるまいか。品川の事例は、創造的で革新的な実験の必須条件としての選択制からはあまりも遠い。著者は、「教職員の自発性を導き出す仕組みを考案して加える」ことを今後の課題として提示しているが、学校選択のオリジナル・ストーリーとは話の展開順序が逆である。

本書の末尾で著者は、著者独自の理論仮説(学校選択の二つの原理の識別)を、「我が国の教育政策の分析の事例研究の仮説として、また例えば、品川区の公立学校改革などの事例研究の仮説としても、その妥当性を検証することが可能になっていることを明らかにし得たように思う」(154ページ)と述べている。
ここでは「その妥当性を検証し得た」ではなく、「検証の可能性を明らかにし得た」と言われている。とするならば、本書の事例研究によって仮説が検証されたと読むのは誤読であるということになる。なかなか難しい読み方を読者に注文している。

本書の読後感はあまりスッキリしたものではない。思うに、その原因の一つは、事例研究の結果が仮説にフィードパックされていない点に求められうるのではないか。仮説の修正を試みる可能性もまた開かれた、これを本書の副産物とみてもいいような気がする。

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